遺言書の検認手続き
遺言者が死亡した際に、遺言書を保管していた人や遺言書を発見した人が真っ先に行うべきことは、遅滞なく速やかに家庭裁判所に遺言書を提出し、検認請求をすることです(民法1004条1項)。遺言書には、相続人の間での遺産相続分など、相続に関する重要事項が記されていると予想することができます。その意味で遺言書は、相続人とその周りの人々にとって大きな利害を有しているものですから、遺言書が真に遺言者の作成にかかるものかどうかを確かめ、その改変を防ぎ、保存を確実にするための手続きが必要になるわけです。この手続きこそが検察による遺言書の検認手続きであります。ですので、封のある遺言書は家庭裁判所において他の相続人立ち合いのもとで開封しなければなりません(同条3項)。ただし、公正証書による遺言については公証人により公の記録が記載されているため、検認手続きを必要としません(同条2項)。
検認を経ないで遺言書を開封してしまっても、遺言書としての効力を有しなくなるということにはなりませんが、5万円以下の過料を取られます(民法1005条)。もっとも、開封者が遺言書の内容を書き換えたような言動が窺えると判断される場合は、遺言書に載せられた開封者の相続分が無くなったり、遺言書そのものが無効となる場合も否定できません。ですので、遺言書の開封は検認時にするのが良いでしょう。
ちなみに、遺言書が無効になる場合としては何かしらの形式的な要素が欠けている場合がほとんどです。例えば遺言者が自筆で遺言書を作成した場合には、本来遺言者による全文・日付・氏名の自筆および印が必要とされますが(民法968条1項)、このうちどれか1つが欠けている場合にも遺言書は無効となります。したがって、検認手続きを経ていないことと遺言書の効力の有無は原則として無関係です(自筆証書遺言の場合は遺言書の書き方も自筆以外指定されていません)。
また、遺言書が有効である場合でも、遺留分を侵害することはできません。遺留分とは、民法で定められた兄弟姉妹以外の相続人が有する最低限の相続持分のことをいいます(民法1042条参照)。後に遺留分権者による遺留分侵害額の請求(同法1046条1項参照)が行われ、相続トラブルが生じうることを考えれば、遺言者はあらかじめ遺言書の内容を遺留分を念頭においたものにしておいた方が良いでしょう。
最後に、遺言書の検認手続きにかかる費用は遺言書1通につき収入印紙800円分と連絡用の切手分になります。
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