相続遺産の使い込みが発覚したら
遺産の使い込みとは、被相続人の遺産を相続人などが自分のものとしている状態を言います。使い込みの具体例を挙げるとすると、相続人が被相続人の預貯金を引き出して自分のために使用していた、被相続人の不動産を売却してそのお金を自分のものとしていた場合などが挙げられます。また、使い込みをする人物は相続人だけではなく、成年後見人が使い込みをしている場合もあります。
こうした使い込みに対しては、刑事事件として対応、遺産分割協議での対応、民事訴訟での対応が考えらますが、使い込んだ人が親族であった場合には刑法上の特例により刑事事件として対応できない場合も多く、主に遺産分割協議と民事訴訟で対応していくこととなります。また、使い込みがなされたのが相続開始前か開始後かにより少し対応が異なることとなります。
まず相続開始前の場合には検討します。使い込みについて被相続人が同意していた場合には、使い込んだ額の贈与を受けていたものと考えて遺産分割協議を行います。これにより実質的に使い込まれた財産を回収することができます。しかし、遺産分割協議は遺産をどういう配分で分けるかの協議であり、そもそも遺産がいくらあるかは協議の対象とはならないため、被相続人の同意なく使い込まれた場合には遺産分割協議では対応できません。そのため、遺産分割協議で対応できない場合には、使い込んだ人に返還を求め、応じない場合には民事訴訟を提起していくこととなります。
次に相続開始後の場合について検討します。この場合、遺産分割協議において、使い込んだ人以外の相続人全員が同意することで、使い込まれていなかった場合の遺産額で遺産分割を行うという対処ができます。これは、使い込まれていない場合の各自の相続分を算出し、使い込んだ人は使い込んだ額をすでに受け取ったものとして考えるという方法ですが、使い込んだ人の相続する額より使い込んだ額の方が多い場合には回収できない分が生じることになります。そのため遺産分割協議で対応できない場合には、民事訴訟での対応をすることになります。
いずれの場合でも、民事訴訟としては不当利得返還請求と不法行為に基づく損害賠償請求が考えられます。この時どちらにも時効があり、その期間は不当利得返還請求では、使い込みがあったことを知った時から5年間、使い込みから10年間の早い方、不法行為に基づく損害賠償請求では使い込みが発覚し使い込んだ人が分かってから3年間、使い込みから20年間の早い方となっています。不法行為に基づく損害賠償請求は不当利得返還請求の場合よりも発覚してからの時効が短く、不法行為であることの立証も難しいため、利用されにくくなっています。
遺産の使い込みが発覚した場合、証拠を収集し、返還を求めていくことになります。しかし、いつ誰がどれだけ引き出したかなどといった証拠の収集は個人では限界があります。また時間が経てば証拠は収集しにくくなり、証拠が隠滅されてしまうこともあります。そのため、使い込みが発覚した場合には、弁護士会を通じた照会などにより、早く確実に証拠を収集できる弁護士に相談することが重要となります。
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